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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)192号 判決 1977年11月29日

控訴人兼附帯被控訴人

鈴木亮一郎

右訴訟代理人

杉谷政視

被控訴人兼附帯控訴人

星野夏男

右訴訟代理人

町田清寿

主文

本件控訴及び附帯控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人兼附帯被控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人兼附帯控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人主張の原判決事実摘示請求原因(一)及び(二)記載の事実は、当事者間に争いがない。

二金五〇万円の抗弁について

<証拠>によると、被控訴人が控訴人に本件賃貸借の敷金として差し入れた金一五〇万円のうち金五〇万円は本件賃貸借終了又は中途解約の際に返還すべき敷金額から控除されて控訴人が取得するものと当事者間で合意された事実が認められるので、この点に関する控訴人の抗弁は理由がある。

三金一〇〇万円の抗弁について

前示敷金一五〇万円のうち金五〇万円を除く敷金一〇〇円につき被控訴人において控訴人が計画した事業に対する出資金の一部とすることに合意したとの控訴人主張事実につきこれに沿う<証拠>は後掲証拠に照らして措信できないし、<証拠>をもつてしてもいまだこれを認めるに足りないし、そのほか控訴人主張の右の事実を認めるに足る証拠はなく、かえつて、<証拠>によると、被控訴人は控訴人が計画した事業に出資することとして、昭和四七年八月に現金で一五〇万円、同月末に現金で一八〇万円の合計三三〇万円を支払い、前示返還を受くべき敷金一〇〇万円を右出資金の一部にあてたことがない事実が認められるので、この点に関する控訴人の抗弁は理由がない。

四右によると、控訴人は被控訴人に対し本件賃貸借に関し受領した敷金のうち金一〇〇万円を返還する義務がある。ところで、控訴人は右返還債務については支払請求を受けた期限である昭和四九年一一月二九日以降遅滞の責を負うにすぎないと主張するところ、敷金返還請求権は、賃貸借終了時において賃借人に債務不履行のないことを停止条件とする債権であるから、履行期の面からいうと、履行期につき特に定めのないかぎり賃貸借終了という一般的には一種の不確定期限付の債権であって、債務者である賃貸人において期限の到来したことを知つた時から遅滞の責に任ずべきところ、敷金の返還につき定めた前掲甲第一号証の記載によるも返還時期につき右と異なる特約をしたものとは認められない以上、本件賃貸借が終了した後である昭和四七年八月一日から控訴人は右敷金一〇〇万円の返還につき遅滞の責に任ずべく、したがつて右金員に対する同日以後支払済みまで民法所定の法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある<以下、省略>

(菅野啓蔵 舘忠彦 高林克己)

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